2019年03月15日

【料理アカデミー】食と健康vol.1-講義編①「食事と病気。時代によって変わること」

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食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。
 
 

講師:池本 真二
聖徳大学教授。日本人の栄養必要量の策定や生活習慣病予防の観点から、高脂肪食摂取によって惹起される肥満、糖尿病、高脂血症などの栄養性慢性代謝性疾患発症予防に関する研究を行っている。(平成24年3月 講座実施時)

「食事学」とは

今回は、「食と健康」というテーマで開催された講義の内容を、WEB版にしてご紹介します。講師は、聖徳大学教授・池本真二先生です。この講義の内容は、3回にわけてお送りします。

通常、「食事」を考えるときには「栄養素」について考えるかと思いますが、この講義では「栄養学」ではなく「食事学」についてお話します。

「栄養学」は、エネルギーをどれくらい摂ったらいいかなど、栄養素の摂取量を明らかにしてきたことで、確立された学問だと考えられます。もともと、病態や病気の症状を改善するために考えられたことがもとになっていますので、“治療を中心としたケア”につながります。
ですが最近では、疾病の予防や重症化の予防、健康保持・増進、ヘルスケアというように、「生活習慣を正しく維持して疾病にならないようにする」ということが重視されるようになりました。

生活習慣の維持には、生活科学や食品の知識が必要ですし、病気の予防のために医学的なことも関係してきます。単に栄養素のことだけでなく、生活や心理的なことも考えなければいけません。それらを統合したのが「食事学」ではないかと思います。これは、「食育」につながる考え方です。

「食べる」ということの意味

なぜ人は食べるのでしょうか。生命維持のため、生きるためということが一番にあげられます。それから、楽しみや健康のためということもあります。食欲も生きるためのもので、人間は生きるためにエネルギーを確保する必要があります。ですが、ただ食欲に任せて何でも食べていいのかというと、そうではありません。

健康を意識する場合と楽しみとして食べる場合、それによって食事の選択の仕方が変わってくるのではないでしょうか。そこに、価値観が生まれてくるのだと思います。食べることの意味は、エネルギーの確保や生命維持のため以外にもあるということです。

ナイチンゲールが発見した、食べ方と回復の関係

私の知る限り、食べ方について最初に提唱したのはナイチンゲールです。

クリミア戦争のときのことになりますが、彼女は同じような病状の人に、同じように病棟でケアをし食事を提供しても、回復が違うということに気づきました。その理由を調べたところ、回復の早い患者さんは、同じ病棟の中で仲間と会話をしながら食事をとっていたことがわかったのだそうです。戦争中ですので、楽しい会話はなかったかもしれませんが、やはりそこに仲間意識や互いを励ます言葉があったのではないかと思います。

食べるときの状況や雰囲気によって回復度合いが変わることがわかってからは、ケアの仕方を少し変えたという記録も残っています。これは、現在話題になっている「子どもたちの個食」の問題にも関係することではないかと思います。

疾病の予防には、食事が一番だという意見

一般的に、疾病を予防するために重要だといわれるのは、「食生活」「運動」「医療」「遺伝子(体質)」の4つです。薬を飲んで予防する方もいらっしゃると思いますが、それは「医療」に分類されています。

イギリスの著名な雑誌『栄養学雑誌』では、健康栄養状態に関係するのは「薬(medicine)」「遺伝子(Gene)」「環境(environment)」「行動(behavior)」だと書かれています。健康かどうかは食事が中心となって決まるため、栄養状態が悪ければ病気になり、よければ健康になるとも提唱しています。この考え方は、日本とほとんど同じです。

みんなのために、“ちょうどいい”予防のバランスを

これほどまで食事が重要視されるようになったのは、やはりヘルスケアの優先順位が高まってきたからだと思います。現在は、少し調子が悪いときには「未病」といわれ、疾病にならないようにケアをする「予防の時代」になってきています。

予防医学では、現在が成熟期とされています。成熟期のあとは、衰退期があります。これは、健康や食を意識しすぎて安全性などを追い求め過ぎることで起こります。行き過ぎてしまうと健康食品などの開発も遅れ、有効なものがなかなか出しにくくなります。開発に伴う研究費がかさめば商品のコストにも影響します。ですから、いまの時代が、利用する側と商品を提供する側の両者にとって、ちょうどいいバランスなのではないかといわれています。

時代とともに、かかる病気の種類も変わる

現在は飽食の時代だといわれていますが、戦後は食糧難だったため、保存性の高い塩蔵品や燻製品が多く、動物性の食品は少なかったようです。そのため、食事が高塩分・高炭水化物で低たんぱく質になり、栄養状態もあまりよくありませんでした。

当時「脳卒中」で倒れた方のほとんどは、血管壁がもろく血圧があがるとすぐにパンクをしてしまう「脳出血」でした。それが、食の欧米化といわれる食生活の変化にともない、動物性の食品、特に脂肪の摂取量が増えたことで、血管が詰まって「脳梗塞」になる方がほとんどになりました。
飽食の時代ではありますが、低栄養のために脳出血を起こす方もまだまだいらっしゃるのが現実です。食の多様性の中で、本人の選択によって拒食状態になり栄養欠乏を起こしているということです。

食の欧米化による問題は、利用の仕方

食の多様性は、単なる欧米化だけの話ではありません。よくファストフードの増加が話題になるのですが、これはファストフードが悪いわけでなく利用の仕方が問題なのです。お惣菜やデリカ食品も増えました。現代の生活パターンから考えると非常に有効なものですが、利用の仕方には問題があると思います。

加工食品や特定食品に過度に依存していると、いろいろな食品があるのにもかかわらず利用するところはいつも同じということもあり得ます。ひとつの食品に頼っていると、食のバランスを崩してしまいます。

また、砂糖の摂取量が多いことも問題として挙げられます。特に炭酸飲料など、気づかないうちに多量の砂糖を摂取していることもありますので、気をつけなければいけません。

次回の講義編②では、食に関する諸問題について説明します。

[つづく]

「食と健康-講義編②食事に関するさまざまな問題を考えよう」は3月中旬ごろ公開予定です。

 

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

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