2018年10月19日

【料理アカデミー】食と文化「すしロールの文化」-講義編①千葉の寿司文化

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食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。
 

講師:龍﨑 英子
千葉伝統郷土料理研究会主宰。昭和30年より独自に各地の農民から直に技術を習得。昭和57年、千葉伝統郷土料理研究会を設立。千葉県文化功労賞受賞、NHK関東甲信越放送文化賞、地方文化功労賞(文部科学省)受賞。(平成24年3月 講座実施時)

アシスタント:峰岸 喜子(栄養士)
(平成24年3月 講座実施時)

太巻き寿司の文化

今回は、平成24年に開催された「食と文化」をテーマにした講義の内容を、特別にWEB版にしてお届けします。

千葉・房総地方の伝統料理「太巻き寿司」の技術の普及に尽力されている龍﨑英子先生をお招きし、「太巻き寿司」をはじめ、千葉に根付く寿司文化について講義をしていただきました。

 

「房総の太巻きずし」は、昭和60年頃、髙島屋で販売されたことがきっかけで多くの人に知られるようになったそうですが、そのきっかけをつくったのが、龍﨑先生でした。その当時のことも講義でご紹介いただきました。

※この講義の内容は、2回にわけてお届けします。

千葉の食文化

お寿司の話をする前に、少し千葉県についてお話しします。
千葉県は、全国的に見て豊かな国だと言えると思います。お米がつくられ野菜は豊富に栽培され、また海も目の前にあるので新鮮な魚や貝が手に入ります。
新鮮なものをそのままおいしく食べることはもちろん、山もありましたので「保存食」という概念もありました。新鮮な魚を山の中まで運ぶのが難しいときは丸干しなどにしたり、地元で採れた塩を使った塩乾物という保存食をつくったりしていたそうです。

保存食としての太巻き寿司

千葉では食物が豊富だったことから農民や漁民が多く、そういう人たちは毎食手をかけて料理をする時間がなかったため、「保存食」が多かったようです。「テンモンドウ」という野菜をつかったお菓子も千葉発祥のものですが、これも保存食の一種です。
さまざまな保存食がありますが、その中で現在でも親しまれているのが「太巻き寿司」です。

平成20年に農林水産省が発表した「農山漁村の郷土料理百選」では、千葉県を代表する郷土料理として「太巻き寿司」と「イワシの胡麻漬け」が選ばれました。
このことから、太巻き寿司が文化的に認識されているということが伺えますね。

千葉ならではの寿司

千葉県は、もともと「寿司」の多い地域です。
九十九里では、漁師たちが「イワシのなれずし」をよくつくっていたそうです。なれずしは、酢を使わないお寿司で、塩を振った魚肉とご飯を交互に桶に入れて積み重ね、発酵させたものです。気温が高いと腐ってしまうことから、「くされ寿司」とも言われています。

なれずしのほかには、「イナの姿寿司」もありました。姿寿司というのは、魚の姿を崩さないようにつくられるお寿司で、骨・内臓を除いて酢で締めた魚に、すし飯を詰めてもとの姿のように見せるものです。現在は、サンマやアジ、イワシの姿寿司をつくる人もいらっしゃいますが、昔はイナでつくられていたようです。

千葉の握り寿司

房総半島沿岸の漁師は、みんな握りで食べます。ご飯の量が普通の3倍くらいあり、寿司ネタがご飯の端から端まで被さるように乗せられています。
館山の握り寿司は大きく、「茂八」というお寿司屋さんのものは特に大きいことで知られています。

そのほか上総興津には、カツオの「はらも寿司」というお寿司をつくっているお店もあります。「はらも」というのはハラスのことで、脂の乗った部位を指します。
鰹節をつくる際、脂肪が多いお腹の部分(ハラス)は鰹節にはならずに塩漬けで保存されます。ちょうどよく漬けられた頃に出回るので、それを酢水に漬けて塩抜きをします。塩抜きしたものを薄くそぎ切りにしてご飯に混ぜたり、握り寿司のようにしたものが「はらも寿司」です。

千葉発祥の元祖伊達巻き寿司

ほかにも、千葉でよく知られているお寿司に、「伊達巻き寿司」があります。
銚子にある「大久保」というお寿司屋さんのものが有名なのですが、ここの伊達巻き寿司は、ほんの少しのご飯に2cm以上の伊達巻きが巻かれています。伊達巻き寿司の元祖ともいわれています。
口当たりは柔らかく、食感は茶碗蒸しのような感じで、甘くて美味しい伊達巻きです。

冠婚葬祭に欠かせない「太巻き寿司」の普及

太巻き寿司は、冠婚葬祭に欠かせないもののひとつです。
昔、お葬式のときにサトイモの茎を煮たものを芯にして、巻き寿司をつくっていたという話があります。太巻き寿司のルーツは諸説ありますが、お葬式のときの巻き寿司が原型だという説もあるようです。
いまはご近所さんとのお付き合いの仕方も変わってきていますが、以前はお祝いごとなどがあると三軒両隣が集まって準備をしました。お祝いの日の2日前にお米を挽いて炊き、巻き寿司をつくっていたのです。

「太巻き寿司」との出会い

わたしが初めて太巻き寿司を食べたとき、実はあまりおいしいとは思えませんでした。
安い海苔を使っていて、巻かれているのは茹でただけで味のないほうれん草と甘い桜でんぶ、赤や緑のかんぴょうも入っていました。
ですが、すだれの使い方や文様の発想にはとっても驚かされたのです。太巻き寿司にのめり込んだのは、文様の発想に魅了されたことがきっかけでした。
その太巻き寿司を東京に持って行ったときに納得してもらえるような味にしたい、という思いで一生懸命改良を重ね、それが昭和60年頃の髙島屋でのデビューにつながりました。そのときには、「房総の太巻き寿司」は日本食生活文化財団にも認められる食べ物になっていたのです。
自宅でつくった試食をラップに包んで配ったところ、警備員も出てくるほどの大盛況だったのです。「誰が食べてもおいしい」というものにするのは大変でしたが、そのおかげで大成功に終わったので良かったですね。

次回の講義編②は、太巻き寿司の文様について解説します。

「食と文化-講義編②太巻き寿司の文様と、つくるときのコツ」を見る>>

 

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

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