2018年07月13日

【料理アカデミー】食と美学-講義編①美をつくる要素〜“かたちといろ”のコーディネート〜

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「美」をつくる要素【1】

「美」は、“統一(unity)”と“変化(variety)”の適当なバランスを条件としています。その両方の多様性と秩序性が、美的かどうかの基準になります。統一されているものは「美」、統一されていないものは「醜」と判断され、さらに統一されているものには多様性が含まれている必要があるのです。
たとえば、入学式などの整然とした式典の中、ひとりがちょっとでも違う格好をしているとすごく目立ちます。一方、整然としたものだけ見せられていると人間は飽きてきて違うものを求めることもあります。それぞれのバランスが、そのときの条件によって変わることが美的状況の難しさでもあり、また変化のおもしろさなのだと思います。
「美」の基準を表す言葉はたくさんありますが、それらを総称した表現が“統一”です。統一感があればまとまって見え、それが整えられて美しく感じるということですね。

「美」をつくる要素 【2】

もう少し具体的な要素として、“調和(harmony)”と“対比(contrast)”があります。“調和”があるというのは、“対比”の組み合わせのバランスでもあります。
もっと細かくいうと、“反復(repetition)”と“交替(alternation)”があげられます。“反復”は洋服の柄や、ネクタイなどの繰り返しの柄で見ることができます。“交替”は、「昼と夜」や「潮の満ち引き」、映画や演劇などでは幕間などがあります。
そのほかに、“律動(rhythm)”があります。さきほどの反復・交替と似ていますが、これらの言葉の中で唯一時間感覚が入った言葉です。それから“漸移(gradation)”。グラデーションというとわかりやすいと思いますが、だんだんと変化することです。

「美」をつくる要素【3】

“対称・均斉(symmetry)”という言葉があります。ヨーロッパのゴシック様式は左右対称の美で、ヨーロッパの造形を象徴するひとつの形です。もうひとつは、“非対称(asymmetry)”。これは日本人が最も好む美のかたちだといわれています。生け花や床の間飾り、それから服飾、女性の襟合わせのスタイルをよく見ると、全く左右対称ではないけれど左右対称形に感じる造形になっています。
それから“均衡(balance)”、これは見た目のバランスなので、感じ方には個人差があると思います。あとファッションでよく使われる、“比例・比率(proportion)”ですね。

「美」をつくる要素【4】

“図形(figure)と地(ground)”、というのもあります。これは、都市計画などでもよく使われる専門用語です。かたちには、浮き上がって見える“図形”とそれを強調して引き立てる背景や周囲の空間となる“地”があります。
多くの方はポートレートを撮ったときに顔立ちを一生懸命見られますが、実は背景とのバランスでものを見ているんです。背景の効果をあまり意識することはないと思いますが、図形はシンボリックなものだと考えたら良いかと思います。これらは刺激条件、観察者の経験など、個人によってものすごく変わります。

「美しさ」は人それぞれ

以上のような言葉がありますが、これを決めつけて使うことは良くないとわたしは思っています。
その例として有名なものに、「ルビンの壺」があります。見る人によって、壺にも人の顔にも見える図形です。パッと見て壺に見えた人は、左右のシルエットを意識すると壺が消えて顔が出てきます。反対に、パッとみたときに顔の画像に見える人もいるわけですね。見る条件よって壺に見えたり、顔が向き合って見えたりするのが「ルビンの壺」です。
このように、人によってモノの見え方は異なります。「美」は決めつけるものではないということは、以上の例からおわかりいただけたのではないでしょうか。「美」を感じ、人に伝えたいと思ったとき、それをうまく伝えるための方法として言葉があるのです。

次回は、色彩の基本について解説いたします。

[つづく]

『食の美学-講義編②色彩の基本〜“かたちといろ”のコーディネート〜』を読む>>

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

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