2019年02月22日

【料理アカデミー】食の安全-講義編②「加工調理で発生する有害物質」

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食と住に深く関わる企業であるクリナップは、現代における“食の大切さや役割”を、皆さまと共に見つめ直すことが大切だと考え、生活研究部門である「おいしい暮らし研究所」が中心となり、聖徳大学さま、武庫川女子大学さまのご協力のもと「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」を企画、提供してまいりました。
ここでは、多彩な講師の方からいただいた貴重なご講義や実習の内容をお届けします。
 

講師:永田 忠博
聖徳大学教授。食品学担当。食品の衛生管理を専門。食品総合研究所流通安全部長を務める。
(平成24年3月 講座実施時)

加工による有害物質「トランス脂肪酸」

次に、加工調理によって生じる有害物質「トランス脂肪酸」と「アクリルアミド」についてお話ししたいと思います。

まず、トランス脂肪酸についてご説明します。
脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸という2つの種類があります。不飽和脂肪酸に、科学的に水素を1個加えると飽和脂肪酸になりトランス脂肪酸ができます。この代表的なものが、マーガリンです。トランス脂肪酸は、食品加工に使うには良い面もあり、お菓子をつくるときに使用すると「パリッ」や「サクッ」という食感が強まります。
ですが、トランス脂肪酸の摂取量と心筋梗塞の関係性を調べたアメリカの調査では、トランス脂肪酸の摂取量が多い人ほど心筋梗塞のリスクが高いということがわかりました。そのため、WHO(世界保健機関)の専門家は、トランス脂肪酸の摂取エネルギー量を、総エネルギーの1%以下にするように勧告しています。
日本では、トランス脂肪酸の摂取量が1%以上だった人は、30〜40代の女性に多かったようです。マーガリンやショートニングなどのトランス脂肪酸が入っているお菓子をよく食べていると摂取量が増えますので、自分で気をつけることが一番です。ただし、心筋梗塞のリスクは欧米人に比べると日本人は低いため、トランス脂肪酸についてはそこまで神経質にならなくてもいい、という考え方もあります。

加工による有害物質「アクリルアミド」

アクリルアミドも、食品を加工することによって生じる有害物質のひとつです。
アクリルアミドは、「人に対しておそらく発がん性がある」といわれています。「おそらく」であるのは、動物では確かめられたものの人での実験や調査結果がないためです。また、アクリルアミドには発がん性だけでなく神経に対する毒性もあります。

2002年に発表されたスウェーデンの研究者たちに研究結果によると、高温加熱した炭水化物を多く含む食品に、高濃度のアクリルアミドが含まれるということでした。具体的には、ポテトチップスやフライドポテト、ビスケットやパンなどの、ジャガイモや小麦を高温加熱してできるものが挙げられていました。“高温加熱”がミソで、蒸したジャガイモからは出ずフライにすると出てきます。水が沸騰する100℃までの間であれば、アクリルアミドの心配はありません。

気をつけたいジャガイモの保存と調理

ジャガイモの調理の際、覚えておいていただきたいことがあります。
冷蔵庫の中にジャガイモを入れておくとアクリルアミドの原料であるグルコース(還元糖)が増えます。還元糖とアミノ酸(特にアスパラギン)を高温で加熱するとアクリルアミドが生成されるため、冷蔵庫で保存したジャガイモを揚げて食べるのは避けた方がいいかと思います。茹でたり蒸したりして食べる分には問題ありません。

アクリルアミドの摂取は、一人ひとりの意識が大事

国際的な食品規格をつくるコーデックス委員会では、2009年にアクリルアミドを減らすための実施規範を決めました。規制値(摂取の基準となる数値)を設定するのではなく、自分たちで含有量を減らす努力をしたり摂取量を控えるなどの対策をしてもらうということです。
家庭での調理でもアクリルアミドが発生する可能性があるため、消費者自身が「どのようにしたら減らせるか」と取り組むことも必要なのです。

食品の安全のための「リスク分析」の重要性

2003年に制定された「食品安全基本法」によって、リスク分析の考え方が導入されました。この考え方は、コーデックス委員会が提案した概念です。
食品安全基本法によって内閣府に食品安全委員会が設置され、そこで「リスク評価」が行われています。リスク評価とは、食品中の危害要因を摂取することによって、どのくらいの確率でどの程度人体に悪影響があるかを科学的に評価することです。食品安全基本法では、「食品健康影響評価」と呼ばれています。

リスク評価の結果に基づいて、関連行政機関がリスクを低減するための政策や措置などを決定することを「リスク管理」といいます。リスク管理での措置においては、「何もしない」という結果になることもあります。調べてみた結果、リスクが非常に小さいのでそのまま食べ続ける、ということです。
どのようにリスクを抑えるかについては、「リスクコミュニケーション」という形で、専門家だけでなく消費者などの関係者や関心のある人と一緒に行う活動もあります。

「食の安全」のために考えたいこと

今回の講義では、主に食品安全(food safety)についてお話ししましたが、食の安全は「食糧安全保障・食品安全・食品防御」の3つに分けて考えるのが主流です。
この3つの中で、今後大きな問題となるかもしれないのが「食糧安全保障(food security)」だと思います。日本では、過去数十年「量」については問題がないという状態が続いていますが、これは歴史の中で見れば奇跡的な数十年と言ってもいいほどで、これが続く保証はありません。

たとえば、農業従事者の年齢が高齢化する中で、10年ほど経ったときに農業を担える人がどのくらいいるのだろうか、という問題があります。人それぞれの意見があると思いますが、国内の農業生産をどのようにして維持するかというのは、とても重大な問題だと思います。

次回は「実習編」として、冬に旬を迎える大根、ネギ、ほうれん草を使ったレシピをご紹介します。

[つづく]

「食の安全-実習編①大根・ネギ・ほうれん草を使った、旬を味わう家庭料理」は2月下旬ごろ公開予定です。

 

この記事は、平成24年に開講されたクリナップ寄付講座「キッチンから笑顔をつくる料理アカデミー」の内容をまとめたものです。

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