2018年02月09日

【料理アカデミー】食の科学「発酵」-講義編①病気を防ぐ微生物の力〜「発酵食品の不思議な世界」〜

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発酵食品②【納豆】—成人病予防、骨の強化、血栓症予防

煮た大豆に納豆菌をつけて発酵させると、大豆のタンパク質が分解され、いわゆるネバネバ成分のある糸引き納豆ができます。とても簡単につくれるので、学生実験で納豆をつくらせても100%失敗しません。納豆の効用ですが、“成人病予防に納豆”とよくいわれます。大豆の中にはイソフラボン、サポニン、レシチンなどの有効成分が含まれています。納豆にはガン、脳卒中、それから心臓病、糖尿病などの成人病を引き起こす原因となる活性酸素の働きを除去する成分があります。そのため、“成人病予防に納豆”といわれるのです。

また“骨の強化に納豆”ともいわれます。納豆にはビタミンK、ビタミンK2が多く含まれ、骨をつくる働きを促進させ、壊す働きを抑制します。骨をつくる主原料はカルシウムですが、カルシウムを摂ったからといって、すぐにそれが骨化するわけではありません。骨化するときに、それを手伝ってくれるのがビタミンKなのです。ですから、牛乳と納豆を一緒に摂取すると骨がつくられやすくなるわけです。

ほかにも、納豆は血栓症予防にも効果があります。納豆にはいま話題のナットウキナーゼという血栓を溶解する酵素があります。私たちの血液の中にはフィブリノゲンという水溶性の物質やトロンビンという酵素があり、このトロンビンがフィブリノゲンの一部を切ります。すると、フィブリンという不溶性の物質ができます。これが血栓の主成分です。固まりですので、それが血管の中にだんだんできてくると血液が流れにくくなります。脳の方で起こると脳梗塞、心臓の方で起こると心筋梗塞を引き起こします。その血栓を溶かす力が、ナットウキナーゼにあるわけです。

発酵食品③【漬物】—現在の形になるまで

漬物の原点は、海水漬といわれています。仮説としていわれているのが、波打ち際に打ち上げられた野菜が潮まみれになっていた、という説です。昔の人はとにかくお腹を空かしていたので、打ち上げられた野菜をなんだろうと思いながらも食べてみたら食べられた。少ししょっぱいけれど、このように塩に漬けておくと長持ちするんだということを人類は発見するわけです。そして塩漬けが始まり、これが漬物の原点といわれています。

塩に漬けることによって、浸透圧の影響で硬い野菜でも細胞が分解されてやわらかくなります。さらに、塩には静菌作用があるため多くの微生物を繁殖しにくくします。耐塩性の乳酸菌は塩漬けにしても生育できるので、乳酸発酵して酸味のある漬物をつくります。そこから、現在の漬物ができあがっているのです。

【漬物】—その種類と効用

現在つくられている漬物は、種類も豊富です。薄塩漬けの代表選手は高菜漬けです。調味料を加えた薄塩漬けとしては、こうじ漬けがあります。また、一度塩漬けしたものに調味料や香辛料を加えたものとしてしょうゆ漬け、福神漬け、粕漬け、奈良漬けがあります。乳酸発酵させたものがらっきょう漬け、ザワークラフト、ピクルスなどです。酸味のある漬物で発酵させないものが、梅干しです。梅干しは発酵させない漬物です。そのほかにぬかを用いたものとして、たくあん漬けやぬかみそ漬けがあります。

漬物の中で特に効用があるものは、ぬかみそ漬けです。野菜は食物繊維やビタミンが豊富です。ビタミンが豊富というと、調理してもビタミンを100%摂取できると思っている人が多いのですが、ビタミンは熱を加えると多くは分解します。熱を加えずに食べられるものはそのままビタミンが摂れるので、漬物はビタミンを失うことがないわけです。また、微生物の発酵によって多種多様なビタミンが蓄積されています。

ぬか床(米ぬか)では、乳酸菌が野菜を発酵させています。米ぬかにはビタミンB1がたくさん含まれていますが、乳酸菌が発酵している間に、いろいろなビタミンをつくります。その中に野菜を漬けることで、野菜にそのビタミンがしみ込むので、最初の漬けていない状態の野菜よりビタミンの種類や量が多くなるのです。たとえばキュウリを漬けた場合、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸といったビタミンが、生のキュウリと比べて非常に多く含まれます。そのほかにも、野菜が持っているカルシウムやカリウム、鉄やミネラルも豊富です。ですから、漬物ごときがと思うかもしれませんが、結構漬物は健康にいいんですよ。

発酵食品④【味噌】—醤油の副産物として誕生

味噌はもともと醤油の原形のようなものです。昔、中国から醤(ヒシオ)というものが入ってきました。醤には、魚醤(ギョショウ)、穀醢(コクビシオ)、肉醤(シシビシオ)というものがあり、日本人はなぜか穀醢を好みました。米や大豆を煮てそのまま放置しておくと、空気中の麹カビや乳酸菌、酵母が付着して発酵を始めます。少し湿らした状態にしておくので液体が浮き出てきて、その液体を集め食べ物につけると非常においしい。これが醤の最初のものです。

ところが、普通だったら液体しか食べないものを、日本人は残った固まりも食べたんですね。すると、この固まりもなかなかおいしいということで、まだ醤油になっていないということから未醤(ミショウ)といいました。平安時代に書かれた延喜式の中にも「酢がいくら、塩がいくら、そして未醤をいくら加えて……」というようなことが書かれています。平安時代にはすでに味噌が使われていたわけです。この“みしょう”という言葉が訛って“みそ”になったという説がありますが、この考えに反対する声も多く、これは食文化の謎のひとつです。

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